フリーランスと個人事業主に違いがあることをご存知でしょうか?働き方が似ていることから、フリーランスと個人事業主は同じと考える方も多いはずです。ですが、実はちょっとした違いがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。そこで今回は、フリーランスと個人事業主に関するそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
”フリーランス”と”個人事業主”の違いってなに?
そもそもフリーランスとは、特定の会社や団体に属さずに個人で仕事を請け負う働き方のことです。
一方、個人事業主とは、税務署に開業届を提出し、個人で継続して事業を行う人のことをいいます。
つまり、フリーランスと個人事業主の違いは、税務署に『開業届を出しているかどうか』ということ。
後述しますが、開業届を提出して個人事業主になることで、一定の控除や補助金を受けられたりします。
このことから、働き方を意味する”フリーランス”に対し、”個人事業主”は税法上の区分を意味します。
例えば「法人ですか?個人ですか?」という仕事の形態を聞かれた際は「個人事業主」、どのような働き方かを聞かれた際は「フリーランス」と使い分けるとよいですね。
”フリーランス”と”個人事業主”のメリット・デメリット
現在フリーランスとして働いていたり、これから独立を考えていたりする人の中には、開業届を出すべきかと悩む方もいることでしょう。
以下では、フリーランスと個人事業主それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
”フリーランス”の場合
メリット
フリーランスのメリットは、以下の通りです。
働く時間や場所を自分で決められることは、フリーランスの大きなメリットではないでしょうか?
一般的な会社員の場合、決められた時間に会社に出社して勤務時間内に働くというのが基本です。
ですがフリーランスの場合、案件によってはパソコン一つで作業ができるため、インターネット環境があれば場所を選ばずに自由に働くことが可能です。
また、きちんと納期までに作業を完了させることができれば、朝や深夜など作業時間も自分次第となります。
1年間の所得(給与)に対してかかる所得税を抑えることができるのも、フリーランスのメリットの一つ。
会社員の場合、税金は毎月の給与から自動的に天引きされ、残った金額が給与として入ります。
一方、フリーランスの場合は仕事で使用する文房具をはじめ、パソコンやデスクといったオフィス用品を経費として計上することができるのです。
また、自宅で仕事をしている人は、仕事で使用した分の水道光熱費や家賃なども経費にすることができます。
自分のスキルを活かすことができる点も、フリーランスのメリットとして挙げられます。
会社員として働いていると、自分のやりたい仕事だけをやり続けることは難しく、場合によってはやりたくない仕事の方が多くなってしまうこともあるでしょう。
ですが、フリーランスであれば、自分がやりたい分野にだけ注力することができます。
また、自分の頑張り次第で収入を上げることができるため、仕事のモチベーションアップにもつながるかもしれません。
デメリット
フリーランスのデメリットは、以下の通りです。
フリーランスになる上で収入が不安定という点は、特に多くの人が抱える不安要素でしょう。
会社員の場合、毎月決められた給与を得られますが、フリーランスの場合はその月の仕事量によって決まります。
急に仕事が途切れてしまうことも考えられるため、給与面においてはリスクもあるということを心に留めておく必要があります。
収入が不安定であることや事業内容によって、社会的信用を得るのに時間がかかってしまうこともあります。
そのため、クレジットカードが作れなかったり、ローンの審査が通りにくかったりする可能性も…。
ですが、近年フリーランスが増加傾向にあることから、中には実績のないフリーランスであっても発行されやすいクレジットカードや制度が増えつつあるようです。
社会保険や税金など、会社員であれば会社が行っている事務手続きは全て自分自身で行う必要があります。
また、毎月請求書を発行したり、年に1回の確定申告なども欠かせません。
仕事と並行して行うとなると、非常に負担に感じてしまうでしょう。
近頃は、簡単に確定申告の書類が作れたり、業務効率化に役立つツールもあるため、上手く活用していくのがおすすめです。
”個人事業主”の場合
メリット
個人事業主のメリットは、以下の通りです。
個人事業主のメリットとして、毎年の確定申告で青色申告が利用できることが挙げられます。
青色申告を利用するメリットは、以下の通りです。
- 事業所得から最大65万円の特別控除が受けられる
- 赤字を3年間繰り越すことができる
- 家族への給与を経費にできる
- 30万円未満の固定資産を全額経費にできる
提出しなければならない書類が多かったり書き方が複雑だったりとデメリットもありますが、青色申告はさまざまな面においておすすめです。
大きな節税効果が期待できるため、個人事業主になった際はぜひ利用してみましょう。
個人事業主になることで補助金や助成金が受けられることもメリットの一つです。
国や自治体では、経営が安定しにくい個人事業主に対して事業の資金面をサポートする制度が設けられています。
ただし、受給するにはいくつかの条件や審査があるため、使用目的を明確にしたり事業の将来性をアピールできるように準備することが大切です。
個人事業主が申請できる主な補助金・助成金は以下の通りです。
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 雇用調整助成金
- 両立支援等助成金
- キャリアアップ助成金
開業届の提出時に『屋号』を付けることで、社会的信用が得やすくなることも大きなメリットです。
屋号があることによって事業用の銀行口座を作ることができ、クライアントからの信頼も高まりやすいといえます。
また、クレジットカードや住宅ローンなどの審査においても、社会的信用から通りやすくなる可能性があります。
デメリット
個人事業主のデメリットは、以下の通りです。
個人事業主のデメリットとして、社会保険において扶養から外れる可能性があることが挙げられます。
なぜなら、開業届を提出した時点で個人事業主として独立したと判断されてしまうことがあるからです。
その判断は各自治体や社会保険を運営する機関によって異なるため、開業届を提出するタイミングをあらかじめ確認しておきましょう。
万が一失業した場合、失業給付がもらえないことも個人事業主のデメリットです。
失業給付を受給する条件は、雇用保険に入っていること。
ですが、個人事業主は原則として雇用保険に入ることができません。
その点については、しっかりと把握しておくことが大切です。
帳簿を付けなければならないこともデメリットの一つです。
個人事業主になると、確定申告をするために日々の取引に伴うお金の動きを帳簿に記録する必要があります。
帳簿は納めるべき税金額を証明するための書類であるゆえ、万が一帳簿の作成を怠っていたり紛失したりしてしまうと罰則が科されるリスクがあります。
時間や手間がかかりますが、簡単に帳簿作成ができる会計ソフトもあるため活用するのがおすすめです。
”フリーランス”から”個人事業主”になるには?
以下では、フリーランスから個人事業主になるための流れを紹介します。
❶開業届をもらう
開業届は税務署に直接足を運んでもらいに行くか、国税庁のWebサイトからダウンロードして入手しましょう。
開業届の提出は、事業開始から1か月以内に行うことが推奨されています。
提出が遅れたとしても罰則はありませんが、なるべく早めに提出できるとよいですね。
❷必要事項の記入・必要書類の準備
開業届が入手できたら、必要事項の記入と必要書類の準備をしましょう。
記入する事項や主な必要書類は、以下の通りです。
・税務署名
・開業届の提出日
・納税地(自宅住所や居所、事業所のある住所など)
・氏名
・生年月日
・個人番号
・職業
・屋号
・開業日
・事業の概要
・給与等の支払いの状況/源泉所得税特例についての項目(従業員を雇う場合)
・開業届
・青色申告承認申請書(青色申告を利用する場合)
・事業開始等申告書
・本人確認書類(運転免許証/パスポート/マイナンバーカードなど)
・個人番号が確認できる書類(マイナンバーカードなど)
・印鑑(直接税務署に提出する場合)
❸税務署に提出
開業届と必要書類の準備ができたら、以下のいずれかの方法で税務署に提出しましょう。
- 税務署の窓口に直接持っていく
- 郵送する
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用する
開業届の提出先は、自宅の住所を管轄する税務署となります。
受付時間は、平日の8:30〜17:00までです。
ただし、税務署が開庁していない土日祝日や夜間は、時間外収受箱に投函することで提出が可能です。
また、郵送にて提出する場合は、本人確認書類の写しを『本人確認書類(写)添付台紙』に添付する必要があります。
加えて、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用する場合は、パソコン・インターネット環境のほか、ICカードリーダライタとマイナンバーを手元に準備しましょう。
さらに、利用者識別番号と電子証明書の取得、e-Taxソフトのインストールが必要です。
まとめ
今回は、フリーランスと個人事業主に関するそれぞれのメリット・デメリットについて解説しました。
フリーランスと個人事業主は同じだと考える方も多いですが、実は開業届を出しているかいないかという違いがあります。
フリーランスもしくは個人事業主、どちらになろうかと悩んでいる方はぜひ本記事を参考に検討してみてくださいね。